靴を磨くための道具と手順

靴を磨く目的は保革なんです

靴に魅せられ、靴を磨き始めて13年経ちました。最近ようやく、自分の靴磨きのスタイルと道具が定まってきましたので語ってみましょう。

靴の所有者が自分で磨く目的は、保革です。爪先を光らせたり見栄えを良くするのは二の次で、プロに任せた方が出来も良いですし時間も節約できます。でも、保革のための靴磨きは自分にしかできないと思っています。

靴磨きは普段靴を履いているときとは違って、自分の眼、鼻に最も近づく貴重な診断時間です。 このときにダメージを見つけてあげることで、適切なメンテナンスが可能なのです。

とはいえ、靴磨きはかなりの重労働です。僕は仕事用の靴を4足持っていますので、一度に全て磨くのに3時間ほど時間を費やしてしまいます。

靴磨きをを怠ると、革というのは油分が抜け皹割れてきます。そして、最も屈曲する小指の付け根付近に裂け目が出来てしまいます。これをクラックといいます。こうなってしまったら、靴はその命を終えてしまうのです。 僕はこれで、J.M.WESTONの靴を2足潰してしまいました。


何事もまず、下準備です。まず、靴ひもは全て取り払って埃落とし用のブラシでホコリを払いましょう。それからキッチンペーパーか布にメルトン・モゥブレイのステインリムーバーで、パッティングしながら前回の靴磨きをした際の靴クリームを取り除きましょう。これで、靴の表革はフラットな状態に戻ります。

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少し時間をおいて、今度はメルトン・モゥブレイのデリケートクリームを小さなブラシで靴全体に塗布していきます。目的は革の保湿と、このクリームに含まれるラノリンは羊の皮脂腺から分泌される蝋分で、革を柔らかくする性質を持っています。柔らかくなると、屈曲の負荷が最もかかる小指の付け根のクラックを予防することができます。これは三陽山長のスタッフさんに教えてもらいました。

このデリケートクリーム、昔は英国のメルトニアンという会社が作っていたのですが、12年ほど前に現在のM.モゥブレイに引き継がれました。中身は何も変わっていません。

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デリケートクリームが乾いたら、ポリッシングクロスで軽くポリッシュして、コロニルの1909シュプリームクリームデラックスを靴に塗っていきます。基本的には靴と同じ色のクリームを選択すれば間違い無いでしょう。このクリームはちょっと前までは「ディアマンテ」、つまりダイヤモンドという名前で、名前の通り磨くとそれはそれは光沢が出ます。カーフ(仔牛の革)にはもちろん、扱いの難しい(クリームが浸透しにくいのです)コードバン(馬の革)にも最適なクリームです。 

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このクリームが完全に乾いたら、ポリッシュ用のブラシでブラッシングしていきます。僕は石川和男氏の作るイシカワブラシを使っています。これは馬の尾脇毛という毛を使っています。洋服用のブラシよりは堅めな仕様です。左側がブラッシング前、右側がブラッシング後の状態R0270969

ブラッシング後はポリッシュ用のクロス(布)でさらに磨いていくと光沢がよりきめ細かくなるでしょう。服飾評論家の故 落合正勝氏は愛人の使い古しのストッキングを推奨していました。質の良いストッキングがもっとも光沢を出しやすいそうですよ。試した人は是非レビューしてください。

これで、ひと通り保革を主眼に置いた靴磨きはお終いです。でも、やっぱり爪先を鏡面磨きで光らせたい!というニーズはあるわけで。これは僕の長年のテーマで、最近になってようやくどの道具を使えば良いかわかりました。

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コロンブス社が展開するBoot Blackの「HIGH SHINE BASE」と「HIGH SHINE COAT」です。必ずセットで買いましょう。まずは、画像の「HIGH SHINE BASE」を爪先に薄く塗って下地を作ります。

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次に「HIGH SHINE COAT」でポリッシュしていくのですが、引っかかりを感じたら、水や専用のポリッシュウォーターで湿らせなから磨いていくとピカピカに光るようになります。もうこれは自分の理想の輝きを得られるまでn回繰り返すわけです。ここにその人の性格が現れると思います。僕は一回で満足してしまうタイプです。

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GRⅡのフォーカスが後ピンになってしまったのと、黒い靴という性格上わかりにくいのですが、左側はトゥ(爪先)に自分の顔が映り込むほどピカピカになりました。Boot Blackのこの製品は素人でも簡単にプロのようなポリッシュが出来るので僕は重宝しています。

僕はこんな感じでいつも手を真っ黒にしながら靴を磨いています。靴を磨くと気持ちも落ち着きますし、翌日足を通した時に自信に溢れますよ。是非参考にしてください。

靴磨き専用の箱が今一番欲しい品です。昔、サフィールノワールという靴磨きセットが豪華な木箱に入って販売されていたのですが、最近見かけません。欲しいと思った時に手に入れるべきですね。

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