パネライ ラジオミール LOGO 3DAYS ACCIAIO シリーズの一番の魅力は…

2018SIHH(ジュネーブサロン)で発表されたPANERAI RADIOMIR LOGO 3DAYS ACCIAIO(PAM00753)とBlack Seal LOGO 3DAYS ACCIAIO(PAM00754)について、HODINKEEのJack Forster氏がレビューしました。

PANERAI(パネライ)はイタリア王国フィレンツェの地方リテーラーとして創業されましたが、やがて第二次世界大戦中には「人間魚雷」と呼ばれる兵器を誘導する枢軸国・イタリア海軍のダイバーのために放射性物質であるラジウムを夜光塗料として使用した「RADIOMIR(ラジオミール)」の製造に着手しました。

連合国・英国海軍も「Chariots」と呼ばれる特殊部隊が同様の作戦で活躍したようですね。

こうした特殊任務に当たるダイバーたちは探知を避けるために月の出ない夜に活動したそうです。イタリア海軍の魚雷の動力は電気モーターであったことから、推進力は弱く、姿形からの「ブタ」と揶揄されましたが、地中海での戦果については芳しい結果が得られられたそうです。

作戦は視認性が乏しい環境であることから、信頼性、文字盤の読みやすさが必須とされ、オリジナルのラジオミールのデザインはそうした要件に徹頭徹尾応じたものに過ぎませんでしたが、これは唯一の目的のためにデザインされた工業製品などによくあることですが、2000年代初頭にはアイコニックピースとなって蘇ったのです。

パネライは過去18年間において、複雑機構を含む製品群を拡大し、リシュモングループで最もイノベーティブなブランドに成長しましたが、ラジオミールとルミノールはこれまでどおりベーシックな姿を保っています。

新作ラジオミール LOGO 3DAYS ACCIAIOは、新作に見えないかもしれませんが、今年新作が発表されたルミノール同様、手巻きのムーブメントに3日間のパワーリザーブを誇るCal.P.6000を搭載しています。ここ数年のパネライのインハウスムーブメント同様フリースプラングによる調速であるため、組み上げ後の精度そのものも、長期安定性も期待できます。

Panerai-Cal.P.6000

これが、70万円〜であればさして驚かないのですが、PAM00753は税抜44万円、PAM00754は税抜47万円と信じられない価格設定。同じリシュモングループのボーム&メルシェ「ボーマティック」といい、高価になり過ぎた高級時計に敢えて警鐘を鳴らすかのような販売戦略です。とはいえ、2018年の製造は1,000本ということで、日本でのデリバリーは100本も満たないことが予想されます。見つけたら買いです。

Jack Forster氏が分析するように、近年のパネライは「筋金入りの」パネリスティからすればあまりの製品展開の多さから迷走していると非難を受けてきました。パネライのように強烈なインパクトのあるデザイン・アイデンティティーを持つブランドが「進化」の道をどのように辿るかは非常に興味深いところですが、その強烈なデザイン文法と実用時計としての歴史を断ち切らずに進化していけば、パネリスティたちにも市場にも受け入れられるだろうと同氏は結んでいます。

PAM00753/PAM00754はまさに「パネライここにあり」という佇まいで、エレガントなクッションケースに曲線が美しいワイヤーラグ、その全てが代え難い存在です。Panerai-PAM00753-on-the-wrist

45mmのケースサイズはダイバーズウォッチとして認められるISO6425をギリギリ満たす100m防水仕様です。ラジオミールはサブマリーナやフィフティファゾムズなどダイバーズウォッチ百花繚乱の1950年代に20年先行している点でも興味深い存在です。

パネライの歴史のルーツは争乱の中に生まれた。そのこと自体は避けようもない事実だ。しかし、役に立つもの、あまつさえ美しい名品の数々は人間の営みの中で最も醜い面である戦争の中から生み出されるものなのだ。その両面性の責はパネライに帰するものではなく、人間そのものが抱えるジレンマなのだ。

ベーシックなデザインに先進的なムーブメントを積んだこの時計の一番の魅力はやはり価格に見合う以上の価値を提供してくれることですね。僕自身かつてラジオミール42mm(PAM00337)を所有していたこともあり、本気で購入を考えている時計です。

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