K.Iwahashiが語るラグジュアリー論







一生モノの腕時計として購入したジャガー・ルクルト『 レベルソ・クラシック・ミディアム・スモールセコンド』

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'79年生まれ。1浪2留の流浪期を経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融業界で会社員として勤務。英文翻訳が得意。 ラグジュアリー全般に関する考察と海外発の腕時計情報をいち早くお届けします。

平成から令和に変わる直前に新しい腕時計を買うことにしました。

実はその前に人生で2軒目の不動産を購入することに決め、契約に際してロレックスを着けて臨むことに少し抵抗があったからという事情もあります。ビジネスやフォーマルな場に携える時計が欲しくなったのです。

あるいは、2018年12月に予約後、あまりの納期の遅延・不透明さに2019年3月にキャンセルしたオメガ シーマスター1948スモールセコンドに見出したビンテージ感への憧憬が捨てきれなかったのかもしれません。

2019年、40歳を迎える自分に相応しい腕時計と考えて僕が選んだのはJaeger-LeCoultre(ジャガー・ルクルト)のレベルソ・クラシック・ミディアム・スモールセコンド(Q2438520)というレクタングル(長方形)の腕時計です。

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荒く施されたギョーシェ彫り

賛否両論あるギョーシェ彫りのダイアルは僕の趣向にはマッチしています。ビッグレベルソはブランドロゴの部分のみ平滑な台座が設置されていましたが、クラシック・ミディアム・スモールセコンドはギョーシェ彫りに直接書かれています。一見雑な処理なんですが、ブランドロゴがこれ見よがしではないところに、寧ろ交換が持てます。

レベルソの歴史

レベルソが誕生したのはアール・デコ全盛の1931年。まだ、ケース製造のジャガー社(Jaeger)とルクルト社(Le-Coulrtre)が別会社であった頃の時計です。

ポロ競技の際に風防が破損しないよう英国軍人の要望を受けて、ケースが反転する機構を実装したスポーツウォッチの開発プロジェクトが外部から持ち込まれ商品化されたのがレベルソ誕生のきっかけでした。当時の技術ではあまりに複雑すぎて、ケース製造はパテック・フィリップを当時手がけていたA&Eウェンガー社に委託したほどです。

その後、断続的に生産を続けてきたものの、現在のような機械式時計として再復活したのは1985年のことです。僕が購入したレベルソは1992年に登場したビッグ・レベルソ(270.8.62/Q2708410)とほぼ同じミディアムサイズです。

ラウンドケース換算は37㎜? あるいは…

ビッグ・レベルソの縦×横×厚のサイズは42.2㎜×26㎜×9.3㎜、対してクラシック・ミディアムのサイズは42.9㎜×25.5㎜×7.5㎜と厚みを抑えた設計。このサイズ感をラウンドケースに換算すると、(42.9㎜×25.5㎜)÷πを平方根して2倍 ≒ 直径37㎜になります。直径37㎜のサイズ感に一番近いのは現行のパテック・フィリップ カラトラバ Ref.5196です。同モデルは厚みも7.68㎜とほぼ同じです。

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ケースはラグピースを含め僅か7.5㎜

2018年に登場したクラシック・ラージは上記の方法で算出すると、およそ40㎜(39.88…㎜)です。大凡のサイズ感がお分かりになるかと思います。

でも、ちょっと待てよ…

どう見ても、感覚的にクラシック・ミディアムは37㎜径のラウンドウォッチに比べて小さいと思います。36㎜のロレックス エクスプローラーⅠ Ref.114270と並べてもレベルソの方が小さいのは明らかです。

REVERSO-and-EXPLORER 114270

前述した換算はラグの先端まで含めた縦幅です。ラグを除いた縦幅は32.5㎜。そこで再計算します。

(32.5㎜×25.5㎜)÷πを平方根して2倍 ≒ 直径32㎜

このサイズ感は現行の腕時計ではレディースに分類されます。男性用の時計だと、ヴィンテージウォッチにこのサイズを認めることができます。例えば、1954年に登場したパテック・フィリップ カラトラバ Ref.2545はまさに32㎜。30.5㎜の初代Ref.96を防水対応のためケース径が大型化したモデルです。

PATEK PHILIPPE Ref.2545
PATEK PHILIPPE Ref.2545 Image by HODINKEE

クラシック・ミディアムはまさにヴィンテージウォッチの復刻版と捉えることができますね。

173㎝/65kg、腕周り15.5㎝の男性として極めて中庸な僕の体型には、この3732㎜相当の時計は極めてマッチするということが、ブティックで腕に乗せてみてわかったのです。

とりわけ、2017年以降のケースバックの形状はラグにかけて僅かに湾曲していて、腕の収まりは非常に良好なのです。そして、純正のアリゲーターストラップに関して言えば、腕周り15.5㎝の僕の細腕を以ってしても奥から3番目の穴に尾錠をセットすることが可能だったことが購入の決め手となりました。

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手首からはみ出さない絶妙なサイズ感

これまでは純正の革ベルトのさらに奥に穴を開けてもらうか、ジャン・ルソーでオーダーメイドする必要があったため、革ベルトの時計を購入するのに躊躇することが多く、同じジャガー・ルクルトであっても、マスターシリーズのストラップは一番奥の穴に尾錠のピンを差し込んでも依然緩く、自尊心を大いに傷つけられたものです。今回レベルソの購入では、質の高いアリゲーターストラップをそのまま使用できるという満足感を得ることができました。

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細い手首に優しいアリゲーターストラップ

交換ストラップも豊富

これに気を良くして、スペインのブーツメーカー、カーサ・ファリアーノが供給するカーフ・ストラップ(品番:JLQC05988Z)をリシュモンジャパンに追加注文しました。こちらは税抜36,000円とカーフにしては些か値が張りますが、ビンテージ感が素晴らしく、インターチェンジブル(バネ棒を外すのに爪を押し込めば良い方式)であるためストラップの交換が容易です。

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カーサ・ファリアーノ製のカーフストラップは驚くほど柔らかい。

尾錠はピンバックルですが、デザートスプーンのような存在感のある形状です。近年のジャガー・ルクルトはピンバックル式、フォールディングバックル(Dバックル)式ともに尾錠の質感が非常に高いですね。尾錠幅は珍しい17mm比較的幅広な18㎜です。

僕はカーフ・ストラップにピンバックルを、アリゲーター・ストラップにカミーユ・フォルネ製Dバックルを装着していますが、18㎜の純正Dバックルを発注しようか悩みどころです。何せ5万円近くもかかるのですから。

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かなり存在感の大きいピンバックル

ラグホールの位置はケース寄りでストラップとの隙間がほとんど見られない仕様です。残念ながら、この時計に僕好みのモッチリした厚みのあるNATOストラップを取り付けることはできそうにありません。少なくとも、ジャンルソー製のNATOストラップは取り付け不可でした。

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ラグホール周辺は入り組んでいる

レベルソは20代の頃から欲しいと思っていた時計で、買おうと思っては他の時計に目移りしてしまって、買いそびれてきた経緯があります。また、フリースプラングのムーブメントに心酔していた2012年頃の僕は、最もシンプルな手巻きのレベルソ・クラシックやビッグ・レベルソに搭載されていたキャリバー822がチラネジ付きのテンワが美しいものの、トリオビス式緩急針による調速を採用していたことや、2010年代半ばにはケースの極端な大型化を嫌気して急激に関心を失ってしまっていたのです。そして、レベルソ・クラシックは一部の複雑機構を残して2016年にひっそりと生産が中止されてしまいました。

キャリバー822/2 822から進化

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反転するケースそのものは最厚部ですら6㎜しかない

しかし、2017年に登場した『レベルソ・クラシック』シリーズに搭載された新しいキャリバー822/2は、調速機構に、2対のミーンタイムスクリューが取り付けられたフリースプーラングに変貌を遂げており、受け石が21石から19石に減らされた点、耐震機構が省略されるなど明らかにコストダウンが図られた点もありながらも、正常進化と呼ぶにに相応しい改良が施されました。

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ラグにかけて僅かに傾斜するのが近年の仕様

失われなかったキャリバー822の美点はリューズの巻き心地の良さ。カリカリと小気味良い音は毎日の儀式の良き伴奏となります。822/2でもその感性に訴える仕様は残されています。パワーリザーブは42時間と、70時間超が当たり前となった昨今では物足りなく感じられる部分も、巻き上げる時間が短くなると思えば合理的と言えます。

とはいえ、時刻合わせに秒針停止機能(ハック)が付いていないキャリバー822系はパテックフィリップのCal.215PSと同じ超高級路線を目指したのでしょうか。日差がどうだこうだ言っていた人間が途端に時刻合わせに寛容になるというのは実に不思議な感覚です。

ところで、僕が購入したレベルソはこれで実は2本目。1本目は妻へ贈ったレベルソ・クラシック・クォーツです。並べてみると、同じレベルソでも随分と大きさが異なるものです。結果として、ペアウォッチになってしまいました。

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妻のレベルソ・クラシック・クォーツ(左)とともに

隙のないレベルソ 欠点は?

欠点らしい欠点がないレベルソですが、薄型ケースの時計ならではの特徴として帯磁しやすいことは間違いなさそうです。購入後一週間で方位磁針に近づけたところ、針が僅かに振れました。精度には影響がなかったことと、磁気抜き器を使用したところ、コンパスの針の振れ幅も小さくなったのでホッとしましたが、磁気に関しては、かなり影響を受けやすいと思います。

また、時計の「ストラップを束ねる」ということが、ストラップ取付部の可動域の狭さからできません。現行の多くの時計がそうなので致し方ないのですが、それならばピンバックル式ではなく、Dバックル式の尾錠が良かったかなと思います。ジャガー・ルクルトがピンバックル式尾錠にこだわったのは、おそらく薄さを追求したためでしょう。

レベルソを愛する著名人として、イエローゴールドのレベルソ・クラシックを所有した服飾評論家の故・落合正勝氏が挙げられます。晩年コレクションを処分した後に残った時計だそうです。また、2016年8月のGQの表紙を飾った俳優 Matt Damonの、グランド・レベルソ ウルトラシン・デュオ(Q3788570)は知性溢れる彼にとても似合っていると感心したものです。

腕時計は体格に合わせて選ぶべき

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レベルソはビンテージウォッチそのもの

腕時計は体格に合わせて選ぶべきで、そうあるためには多様なサイズ展開を惜しまない。それを実践するジャガー・ルクルトの意気込みには敬意を表さざるを得ません。同時に、このクラシック・ミディアムというアジア人に最適なサイズを提供せしめたのは中国人の存在が大きいのだと思います。派手な時計を買い漁るイメージを勝手に持っていましたが、実は中国人はクラシックな腕時計を好みます。彼らの審美眼は決して侮れないのです。

表題にあるように、この時計が一生モノであるかどうかですが、ジャガー・ルクルトはメンテナンス依頼を受けた時計については生産の有無を問わず修理してくれます。これはパテック・フィリップと同じスタンスです。もちろんル・サンティエに立地するこの会社が存続することが前提ではありますが。また、手巻きであることから、自動巻では摩耗しやすく、交換必須な切替車(リバーシングホイール)が存在しないことから、メンテナンスについてはそれほど心配する必要はなさそうです。

あと、一生モノである要件として、「手に入れてしまったら簡単には売却できない」という点において、このレベルソはかなり優秀だろうと思います。アイコニックなモデルには珍しいことですが、レベルソは購入したら半値で売れたら御の字という印象です。

だから、僕は次回のメンテナンス時にケースバックにエングレービングを施そうと企んでいます。

8年に延長された国際保証<ケアペアプログラム>

僕のレベルソは新品購入したおかげで、2019年5月15日より始まったジャガー・ルクルト ケアプログラム加入で国際保証が8年に延長されました。旧来2年の保証期間が大幅に延長されたことになります。

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エングレービングを待つポリッシュされたケースバック

オメガが5年、ロレックスが4年の長期保証を提供するようになったこともありますが、ジャガー・ルクルトの保証期間の長さは抜きん出てますね。当然期間内にオーバーホールが必要になれば、対応してくれるでしょう。

注意点は、このケアプログラムはオーナーを特定することになるので、譲渡が不可能であることくらいですね。

ジャガー・ルクルト ケアプログラム
ケアプログラムはオンラインで登録する。シリアル番号あれば可能

それにしても、オーバーホール料金は75,600円と定期的に実施するには躊躇する価格になりました。多少部品が傷んだとしても、時計が止まってしまうまではメンテナンスをお願いすることはないかな…

ジャガー・ルクルト ケアプログラム-2
オンライン経由でオーバーホールやオプションで交換部品まで指定可能

ケースのサイズ感もムーブメントも成熟の域に達したレベルソ・クラシック・ミディアム。現行品だからといって、いつでも買えるわけではありません。このモデルは常にディスコン(生産停止)のリスクが付きまとうモデルなのです。それは、万人による万人のための腕時計ではないからです。ですから、欲しい方は見つけたら「買い」なのです。

基本情報
メーカー Jaeger-LeCoultre(ジャガー・ルクルト)
モデル/型番 Reverso Classic Midium Small Second/Q2438520(アリゲーターストラップ),Q2438522(カーフストラップ)
縦×横×厚さ 42.9㎜×25.5㎜×7.5㎜
ケース素材 ステンレススチール
防水性能 30m
価格 670,000(税抜)
ムーブメント情報
キャリバーNo. Cal.822/2
巻上方式 手巻
振動数 21,600
調速機構 フリースプラング
パワーリザーブ 42時間
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