財布がそろそろオワコンな時代に、クロコダイル革の財布を買ってしまった…
2017年の生活上の最大の変化は、財布をほとんど使わなくなったことです。
なぜなら、コンビニでも、スーパーでも、改札でもApplePay(QUICPay)で支払うようになったからです。数十円の買い物でも、全てApplePayで決済してます。
ですから外出先でiPhoneのバッテリが落ちると、詰みます。
現金決済するのは、お祭りの屋台とかよく行くデニーズくらいです。
そんな僕がどういうわけか、クロコダイル革の財布を買ってしまいました。
クロコダイル革の品をいつかは、と白洲次郎のエルメスのアタッシュケースを本で見て決意したのは遥か昔のことですが、クロコダイル革は繊細な革という印象で敬遠していました。
ところが、仕事で出会った銀行員の方から見せていただいたクロコ革を使った財布、名刺入れ、小銭入れでクロコダイルの美しさに改めて感じ入りました。
程なくして、T.MBH主宰の革小物司・岡本拓也さんとの会話の中で、クロコダイルやリザードの耐久性の高さを知り、本格的に革小物類のクロコダイル化を検討し始めました。
その中でも、ApplePayにその座を奪われそうな財布を真っ先に選んだのは、これが最後の財布になるとしたら最後のチャンスだと考えたからです。
そう決めると、面白いことに藤井鞄店(Fugee)のクロコダイルの札入れを入手する幸運に恵まれました。躊躇なくGETしました。スモールクロコ(イリエワニ)の竹斑(タケフ)の配列の整った美しい品でしょう?
入手してからはこの新しい素材の美しさに見惚れると同時に、どのように革が鞣されるのか、どのようにメンテナンスしていけば良いのか好奇心が止まりません。
面白いことに、クロコダイルの鞣し工場はアジア、それも日本に集中しているのですよ。クロコダイルと一言でいっても、様々な品種(ポロサス、ニロティカス、ナイルワニ、シャムワニ等)が存在し、アリゲーターと混同されること多いのですが、別物です(後者は短くて幅の広い口先が特徴)。この違いは息子に教えてもらいました。
現在、流通している革の全ては養殖のワニで、ワシントン条約に基づいた検査の元で管理されています。原皮の確保にかかるコストはカーフの10倍近くになることもあり、世界的な原皮不足にあって、高騰の一途を辿っているようですね。
僕が幼少期に過ごしたパプア・ニューギニアでは養鶏場とワニの養殖が併設されていました。ゴルフ場の沼にはワニが住んで居て、民芸品もワニを象ったものが多く、正に生活に密着した生き物でした。
エルメス が使用する最高級のポロサスはこのニューギニア産のスモールクロコを指します。エルメスの刻印で∧表示のあるものがそれにあたり、通常店頭でお目にかかることはありません。店頭に並ぶのはやや格の落ちるアリーゲーターで刻印表示は□です。
ワニの屠殺方法が残酷だと動物保護団体のPeTAにより指摘されていることも認識することも重要です。愛用や消費によって倫理が問われるのが、世界の常識となりつつありますからね(映像は残酷なので閲覧注意)。こうした不都合な一面も知って、清濁併せ呑んだ上で入手を検討してください。
革の仕上げも光沢感のあるグレージングという革に圧力を加えたものと、バフ仕上げといって、マット感のある仕上げでは表情が全く異なります。いずれも経年で互いの風合いに近づきます。例えば、グレージングがマット調に変化していくといったように。
僕のクロコダイル革はグレージング仕上げです。この光沢が堪りません。
肝心の耐久性ですが、引っ掻き傷の類はカーフとは比べものにならない位強いです。半面、水滴が付着すると、表面が曇ったよう光沢が鈍くなります。すぐに拭き取ってコットンで乾拭きすると復活するのですが、長時間経過すると水ぶくれのような跡が残ります。ですから、取り扱いの特性はコードバン(馬の尻革)に近いですね。藤井さんご当人によると、
僕もクロコで財布を作りますが、この革って難しいんです。斑と斑の間の溝部分は耐久性がないので、そこと折り部分が重なるのを避けなきゃいけない。
出典:最高級鞄&革小物読本(永久保存版)世界文化社
最近ですと、マット仕上げやヌバック(起毛)仕上げなど新しい仕上げが登場していて、これらの仕上げは防水加工が可能なようです。
僕の好みであるグレージング仕上げの艶を維持するためには、やはり水に注意しなければなりません。結果として、仕様頻度が低い現状は維持するには良い環境かもしれません。
メンテナンスは基本柔らかいコットンで乾拭きする以外にありません。
コロンブスからクロコダイルクリームという専用クリームが発売されていて、僕も使用していますが、手の皮脂で曇ってしまった艶がかなり戻りますのでオススメです。シリコンオイルが含まれているので、防水性がアップします。
あまり教えたくないのですが、補色が必要な場合はコロニルのシュプリームクリームデラックスを指で薄〜く塗ると良いです。このクリームはカーフはもちろん、コードバンからエキゾチックレザーまでオールマイティにケアできます。製造国は流石のドイツです。かれこれ15年ほど使っています。
クロコダイルは革の宝石と呼ばれるに相応しい風格を備えています。ダイアモンドが火に弱く(炭化)、クロコダイル革は水に弱いというところも対照的で、宝石に通じる儚さを感じます。
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