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“お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践” 勝間和代

“There is  no such a thing as free lunch”


この言葉こそ本書の神髄だと私は読んだ。日本人に欠けていると言われる金融リテラシーの入門書を紹介する。私自身には資産を利殖する余力等全く無い程スカンピンだが、先日読んだ”ビジネス頭を作る7つのフレームワーク力”に

①住宅ローンを抱えない

②大型の生命保険に加入しない

③車を持たない

ことがお金を貯めるコツだと言う趣旨の文章を見つけ、月換算で自動車に7万円超の固定費を投じてしまっている私としては、大いに危機感を持って読み始めた。


著者が主張するのは保有資産を定期預金に寝かせておくのはそれ自体が(機会損失が生じているという点で)リスクであり、それよりはcommissionを払って数%程度の収益を得る方が社会的道義に適うと説く。

感心したのは、保有資産の50%を超える貯蓄率に対して国債利回りより低い金利(risk free rate)で資金調達をしておきながら、金融機関のパフォーマンスは低いと看破している点だ。

確かに銀行などは周知のとおり、税金が投入されていながら(多くは回収されたそうだが)、他業種に比し旧態依然とした感があるし、郵便局などは明らかに無駄な第3セクターに資金を投じたわけである。著者の主張の範疇かはともかく、公的年金がどれほど無駄な、センスの欠けたことに使われてきたかは既に国民の知るところである。

バブル期のような高金利時代はともかく、こうした預金に寝かせるというほぼ惰性に近い投資行為は、上記の社会閉塞を招くというのは理にかなっていると私は思う。

投資という行為が社会的責任を負う(Social Responsibility Investment)という著者のスタンスは、先日視聴したTBSの番組”情熱大陸“のinterviewで著者が何故投資をするのかという問いに“せめて経済成長(率)に見合うリターンを求める”正当な手段という趣旨の発言を聞いたときと一貫している。

さて、冒頭にあげた3つのhookのうち、住宅ローンも生命保険も立派な金融商品である。当たり前だが本書を開くまでその認識が全く無かった。したがって、不動産にしてもリターンが見込めるならば投資する価値はあるわけだ。不動産投資というと他人に貸すことを想像しがちであるが、自分で済むことも投資行為なのだ(!)ただし、住宅ローンは金融機関が対個人での取引のうち最も旨味のある商品なので、逆にこれを出し抜いてリターンを得るのは難しいと著者は言う。特にマンションなどは広告費や人件費が販売価格に織り込まれているので、特に不動産の価格が上昇しない昨今にあっては多くが投資に見合わないとする(つまり売却損を抱える)。

それ以上に感情的な要因が大きい気がする。一つは、著者がいうとおり”所有欲“に起因する意思決定。他人に家賃を支払うくらいならローンで自分の手元に残したいという意思決定がそうではないか。私自身は

①釧路沖地震経験者ゆえ、地震による倒壊を極度に恐れる(現在も東南海沖地震が将来起こりうる名古屋に住んでいる)

②将来親族の所有不動産の相続が期待され得ること

③定住を好まない性格(転勤族の家庭環境であったため)

④不動産を所有しないことに妻の同意を得ていること(これが一番大きい)

という諸事情のため、不動産取得による住宅ローン投資というのは考えられないが、実際投資的意思決定を経るケースは少ないのではないだろうか。 

生命保険について著者は定期逓減保険を勧めている。それは貯蓄型の生命保険などは貯蓄部分と保険料部分が複雑曖昧であるからだそうだ。私自身生命保険に加入していないので意見すべきではないかもしれないが新入社員だった頃、会社には生命保険会社の営業が待ち構えていて訳もわからないまま加入するという雰囲気であった。そんなスタイルなので断って今に至っている。

また、一人前の人間なら生命保険くらいは加入すべきと近しい人にもアドバイスを頂くくらいなので、なるほど不動産と同じくリテラシーのないまま投資すると痛い目に遭いそうだ。この2つの投資に付いては余計な感情論や慣習/文化が意思決定に入り込む分著者がいうとおり”金融と言う観点からは“良い投資対象とは言えないだろう。

私が心酔する自動車に至ってはリターンすら得られない、それも人生で一番大きい類いの”消費“であるためますます手に負えないのである。

ところで、冒頭①〜③の実践により捻出した資金を”貯めろ“とは著者は要っていない。ここからが本書の実践編なのだが、それを消費や家計に回さず例えば手始めにノーロードのインデックス型投資信託に積立投資しながら資金形成できたら株式指数に連動する国内外のETF、FXなどに“分散して(asset allocationを設定したうえで)”投資しろと勧める。

“ボーナスが出たらアクティブ型投資信託”というのはボーナス時が必ずしも適切な投資タイミングではないとamazonのreviewで批判されていたところであるが。とにかく“管理できるのはリスク、リターンは管理できない”という言葉が頻出する。金融商品の選別よりよりも分散化に力点を置いているようだ。

ところで、年5%の投資運用率が継続すると仮定した場合、複利計算上原資が2倍を超えるのは15年しかかからない。順調に資産を利殖し自信過剰になったところでトンデモ理論に騙されたりもするらしい。皮肉でもあり実に奥が深い。

今後企業年金は401K化し加入者ごとに投資先の選定を委ねることになると著者は予言するが、そのときに必要なリテラシーを備えるためにも本書を切り口に研鑽を積まなくてはと危機感を募らせている。

一方で、私はMicrosoft Moneyやspb financeなどのsoftwareを利用して支出管理しバランスシートを正確に作成するだけでいい気になっていたが、それは他の多くの人たちと同様、消費することに慣れているだけで、“金融的な観点から”はパフォーマンスには全く貢献していない恥ずべき状態にある。

ただ、本書と出会う前に冒頭での別著のquotation以外に週間ダイヤモンドの山崎元氏(楽天証券)が連載でETFに触れていたことを強く記憶に留めておいたり、資産運用を始めるにあたり証券口座を開設してみたりとアンテナを広げていたので、それはそれで私のserendipityと慰める次第である。

 

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