湯河原温泉 ふきや
妻の悪阻がピークに達し、あまり遠くへは出掛けられない事情もあり、両親の予てからの勧めでもある湯河原の「ふきや」に11月末日、一泊してきた。自宅から80km圏内の“超”近場の小旅行(excursion)だ。
自宅を午後2時くらいに出発して2時間足らずで到着。急な坂をPoloに鞭打ち登ると、その高台に旅館はある。普通は玄関に車を停めて宿の人に駐車を任せるものだが、坂を登るのに必死で、自分で車を停めてしまった。不文律を侵された旅館の方も困惑したに違いない。
部屋はロビーに程近い302。非常にこじんまりとしていながらも、なんとも言えない上品な雰囲気。消火栓も布地に包まれていて、日常(非常含)を意識させない配慮に感動。
そして、早速大浴場へ。平日のためか一人で独占することができた。とても清潔で檜の桶なども状態が良いところを見ると頻繁に交換しているに違いない。
湯上がり処も併設されており、静かな音楽と和紙越しの暖かい光を、リクライニングチェアに身を任せながら眺めていると、本当に生き返ったような気持になった。夜9時には貸切り露天風呂を利用したが、これが素晴らしい。総檜でできた風呂桶と脱衣所。脱衣所の壁には「あんまり先は外から見えます」と但し書き。なんだか茶目っ気まで兼ね揃えている旅館らしい。
料理は懐石で、器も非常にこだわっており、器を眺めてゆっくり楽しむことができる。量も多すぎず、少なすぎずでちょうど良い。朝食は豪勢で、その日は夕食も簡素に済ませてしまった程ボリュームがあった。
ところで、風呂から上がり、iPhoneを車に置いてきてしまったのに気付いて、取って戻った際にロビー(表現として正しいのか?)で座ったeasy chair(sofa)の座り心地が非常に良いのに気付いた。そのチェアはファブリックのものだったが、そのすぐ側に置いてあったレザーのチェアのかけ心地はperfect。
これは帰り際、若女将に伺った話などを総合すると、Ib Kofod-LarsenがデザインしたIL-03という作品だ。新宿高島屋などに店舗を持つKitaniが取扱っており、問い合わせたところ、木部を山桜、ファブリックをデンマークから取り寄せたもので誂えると、89万円ほどかかるものだそうだ(レザーは合皮のためか若干安い)。
よく見回すと、そうした一級の家具が館内の至る所に配置されており、デンマーク家具との調和がこの旅館の特筆すべき特長であることを発見した。このあたりのこだわりは旅館のWebページでも紹介されているので、ご覧いただくか、実際に行ってみて楽しんでいただきたい。
おそらく、この違和感の無さはデザインこそ北欧の錚々たる重鎮たちによるものの、製造は日本国内で行なわれているもの(要はライセンス製品)だからに違いない。そして、Kitaniは私の母方の祖父の出身地である飛騨高山が出自ということで、より親しみを感じてしまう。
私のようにモノに固執する性癖のある人間にも新たな発見を教えてくれるこの旅館に、私はきっと通い続けるだろう。
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