BESSの注文住宅ジャパネスクハウス『程々の家』を見てきました
美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを余儀なくされた我々の先祖はいつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的にそうように陰翳を利用するに至った。
これは谷崎潤一郎『陰翳礼讃』からの一節です。この陰翳礼讃をコンセプトに掲げた家づくりを提案するBESSの『程々の家』にはかねてから興味を持っていましたが、愛知県小牧市の展示場(BESS北愛知)で見ることができると云うことで、行ってきました。
谷崎老人も理想の家を求めて試行錯誤を繰り返した様子が同書から窺えます。それくらい四季のある日本の家造りに普遍性を与えるのは難しいことなのかもしれません。
兼好法師は徒然草の中でこうも記しています。
家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居は、堪へ難き事なり。
従って、初夏の今、住宅に思いを巡らすことは、あながち見当違いなことでもなさそうです。
BESSの展示場にお邪魔するのは2回目で、2年前、代官山の展示場で100万円台で買える小屋IMAGOを内覧して以来です。
3ヶ月の田舎暮らしで、その生活スタイルが気に入ったので、田舎に合う風情の家が良いかなと考えが変わってきました。
実際展示されている「程々の家」は2006年の設計に基づいたもので、現行のラインアップでは「九重」と云うグレードに最も近いとのことでした。
特徴的なのは、玄関に入ってすぐ目の前にリビングが現れる大胆な設計。大きな甲羅屋根の傾斜に沿った天井の奥行き感も不思議です。家具はかなり選びますね。
リビングとキッチンに隣接するのはウッドデッキのバルコニーで、そこにディレクターズチェアなんか置くと、素敵だなと思うと楽しくなってきました。床も壁もすべて木材が使われていて、外は気だるいほどの暑さでも、内部はカラッとしています。空調は小さなエアコン一台が稼働しているだけだったので、木材ならではの吸湿力なのでしょうか。
室内は基本暗いのですが、採光窓を付けたり、壁の木材の色を明るくすることでトーンを調節できそうです。
キッチンも収納部分は木です。現在の仕様だともう少し新しいでしょうね。
風呂場(オプション)の様子。こちらも現在の仕様では廃盤になっているようです。確かにメンテナンス大変そう。
寝室内。天井の梁を眺めながら目を瞑ると、いい夢が見られそうです。
1Fの書斎です。写真には収めていませんが、収納も充実していて使い勝手は良いです。
家中、木の香りが心地よい。
とはいえ、雨などの水を吸った木材は菌によって腐食する可能性もあることから、革靴に油分を与えるようにメンテナンスが欠かせません。メンテナンスフリーどころかマメにメンテナンスしないと朽ちてしまうタイプの家です。
こうした面倒をも抱えこんで、支払う価格は税抜2,285万円です。総床面積が41.7坪なのでざっくり坪単価60万円になります。ただし、カーテンと家具を除いた照明や設備を含めた価格を高いと見るか安いと見るかはそれぞれかな。
田舎に家を建てるということは、資産価値はほぼ期待できないか、売却に時間を要する「消費」に近い行為です。でも、だからこそ覚悟を決めて自分が本当に住みたい家を追求できるというこでもあります。
家を巡る旅はまだまだ続きます。
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