【SIHH2019】垂直に配置された脱進機を持つF.P.ジュルヌ トゥールビヨン・スヴラン・バーティカル
SIHH2019(ジュネーブサロン)で来場者をアッと言わせたであろう作品は F. P. Journe(F.P.ジュルヌ) Tourbillon Souverain Vertical(トゥールビヨン・スヴラン・バーティカル)です。
トゥールビヨン・スヴランは1999年の誕生から20年のロングセラー機となりました。そこに、今回トゥールビヨンが収められたケージが垂直に配されたモデルが登場しました(つまり、従来のモデルはは水平にケージが置かれていたわけです)。
Vertical(バーティカル)という単語は水平に対して垂直であるという意味です。同じような単語にPerpendicularがありますが、こちらは直線に対して垂直=垂線という意味合いがあるので、微妙にニュアンスが異なります。
トゥールビヨンはテンプとガンギ、アンクルが一つのケージに収められた特殊な脱進機を指します。この中でテンプは円状のテンワという部品があり、これらを垂直に配置すると、ケースに深みが必要となります。
従来のトゥールビヨン・スヴランは直径40mmに厚さは9.9mmと薄型でありましたが、トゥールビヨン・スヴラン・バーティカルはトゥールビヨンを垂直に置くため、直径43mmに厚さ13.6mmと大型化しました。
文字盤は金色のメッシュの地盤に2つの溶け合うように配置されたgrand feu (グラン フー)エナメルダイアルが実に美しいですね。トゥールビヨンの開口部はすり鉢状になっていて、徹底的にポリッシュされています。トゥールビヨンが駆動するとその動きが反射して荘厳な眺めを楽しませてくれます。ここはRevolutionによる動画を確認してください。
フランソワ・ポール・ジュルヌさんは何も奇をてらってこのようなモデルを発表したわけではありません。トゥールビヨンを垂直に配置するのには合理的な理由があります。
テンプは文字盤から見て「1」ではなく「一」に垂直です。つまり、文字盤を上にして置いても垂直、腕につけて直立しても垂直、寝るときナイトスタンドの上にリューズを上にして横向きに置いても垂直と、身に着けても外して置いても地面に対して垂直になるように配置されています。
ムーブメントというのは姿勢によって精度が大きく変化します。しかし、姿勢が一定であれば精度は安定するものなのです。トゥールビヨン・スヴラン・バーティカルはこのような計算の元に設計されました。
キャリバー1519の仕上げはイングリッシュポケットウォッチのムーブメントのように美しく仕上げられています。地板は18Kのローズゴールドで80時間のパワーリザーブを毎時21,600振動で駆動します。トゥールビヨン機構は30秒で1回転と通常のトゥールビヨンの2倍の速度で回転します。
そして、従来のモデルから受け継いだルモントワール・デガリテという香箱の主ゼンマイからのトルクを4番車のスプリングに蓄積→解放を繰り返すことで安定的にトルクを伝達するコンスタントフォース機構を備えています。この機構は文字盤側の7時の位置に開けられた開口部から見ることができます。
このコンスタントフォース機構は1秒間で蓄積→解放を繰り返すので6時位置のスモールセコンドはデッドビート(ステップ運針)で駆動するのです。
いかがでしょうか?実に美しい時計でしょう(溜息)。
トゥールビヨン・スヴラン・バーティカルはプラチナモデル/予価2,700万円(税別)、18Kローズゴールドモデル/予価2,650万円(税別)の2モデル展開です。
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