K.Iwahashiが語るラグジュアリー論







2020年新作 ロレックス サブマリーナーデイト41 Ref.126610LNを1週間徹底レビュー!

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ロレックス
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'79年生まれ。1浪2留の流浪期を経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融業界で会社員として勤務。英文翻訳・映像翻訳の実績多数。 ラグジュアリー全般に関する考察と海外発の腕時計情報をいち早くお届けします。

2020年9月、久々に明るいニュースが飛び込んだ。ロレックスが新作を発表するティザー広告を打って出てのだ。そして、大方の予想はサブマリーナーであった。サブマリーナーデイト Ref.116610LNは2010年、ノンデイト Ref.114060は2011年と既に10年選手モデルなので、更改は当然のことと思われた。

ロレックス サブマリーナーは1953年に始まるダイバーズウォッチの系譜であり、特徴的な回転ベゼルを備え、長針(分)にベゼルの▽マークを合わせることで、経過時間(分)を計測することができる。これは潜水するダイバーの酸素ボンベの残量を示すことから、ある種生命に関わる重要な機構である。したがって、ベゼルの回転は時計回りにしか回転しないよう、逆回転防止機能が付いている。GMT-マスターの24時間ベゼルが両方向に回転するのと対照的である。

リファレンスとして最も長く君臨したのは、ノンデイトRef.5513で1962年から1989年まで様々な変更が加えられながら製造された。ロジャー・ムーアが演じる映画007のジェームズ・ボンドもこのリファレンスである。搭載されるムーブメントは、Cal.1520で、精度調整は(驚くべきことに)緩急針方式である。

デイト表示の歴史は意外にも浅く、1969年に登場したRef.1680が始祖である。搭載するムーブメントは、名機Cal.1575。マイクロステラナットによるフリースプラング方式を採用した調速機構である。

Hodinkee Japanが詳細に編纂しているので、参照されたい。

新作サブマリーナーデイトは、デイトジャスト系や一部のスポーツロレックス(DEEP SEAとYACHT MASTER)に搭載されている2018年登場のCal.3235が採用され、ノンデイトは現行エクスポーラーⅠ Ref.214270が搭載するCal.3132が採用されると僕は予想していて、外装の変化はないと考えていた。

2020年新作 サブマリーナーデイト Ref.126610LN

現行のスポーツロレックスは“マキシ(Maxi)”ケースと呼ばれる、ラグの太い形状が特徴的だ。これがしばしば「座布団」と揶揄されたが、このデザイン文法は変わらないと思っていた。

ところが、蓋を開けてみるとサブマリーナーは直径41mmに大型化されてしまったというではないか。さらに驚いたのは、ノンデイトのサブマリーナーには新ムーブメントCal.3230が搭載されること。これはCal.3235からカレンダー機構だけを除いたものとなり、ムーブメントの基本構造は同一となったことを意味する。

ケースの大型化はしかし、注意深く見ると事情が異なる。そもそも先代Ref.116610LNまでの直径の実測値は40.2mmであり、40.0mm超である。一方、Ref.126610LN/124060の実測値は40.5mmで41mm未満である。ロレックスの直径公称値は小数点第一位を四捨五入しているらしく(?)、実測値の差異は僅か0.3mmである。これは知覚できるほど差異を感じないのではないだろうか?実際、ラグからラグまでの縦幅は48.2mmと、先代Ref.116610LNと比較して0.2mmの伸びに留まっている。

SUBMARINER Ref.126610LN
ドットインデックスのK18WG製の縁取りも力強い印象になった

さらに、ケースの重厚さを象徴したラグが細くリデザインされている。印象としては僕が2001年頃に所有していたノンデイトのRef.14060に近い。現行型でいえば、デイトナ Ref.116500LNや同じダイバーズで直径43mmのシードゥエラー Ref.126600、44mmのディープシー Ref.126660も同じプロポーションを持つ。2016年にはRef.114060を入手してそのラグの迫力に圧倒されたが、今作はかなり細い。しかし、直径はそれほど変わっていないことから、どこにしわ寄せされたかと訝しむと、ブレスレットの印象が異なることに気づく。そう、ブレスレット幅が1mm増加したのだ。つまり、エンドリンクが収まるラグ幅は21mmとなった。

先代までのサブマリーナーはラグ幅20mmをずっと維持してきた。それは、NATOストラップに換装する際の汎用性に大きく寄与してきたのだが、リファレンス6桁時代になると、ケースサイドがバネ棒と近接するようになり、その隙間はおよそ1.2mmに迫るようになった。そうすると、すこし厚め(1.6mm)のNATOストラップやレザーストラップは換装が適わないのだ。だから、随分前から僕はロレックスがオーデマ ピゲ ロイヤルオークのようなインテグレーテッドブレスレット(一体型ブレスレット)ウォッチになってしまったと嘆いた。ラグ幅が21mmになったとしてもブレスレットを付け替えて愉しむ自由は許されていないので、同じことなのである。なお、ラグ幅が同じ他モデルとしてデイトジャスト41 Ref.126300、ヨットマスターⅡ Ref.116680が存在する。

SUBMARINER Ref.126610LN
側面から眺めるサブマリーナーデイト

ロレックスが意図的にケースの大型化を印象付けようとしたのかは定かではないが、40mm径を支持するサブマリーナーファンが旧型となるRef.116610LNを入手しようと躍起となっていて、2次流通市場の過熱ぶりに驚くばかりである。

僕自身は、圧倒的に新型Ref.126610LN/124060のプロポーションを支持する。ただ、昨今のロレックス、とりわけスポーツロレックスの急騰を見ていると、入手は叶わないと思っていた。そうした矢先、様々な幸運が重なってRef.126610LNを入手するチャンスが巡ってきた。そのチャンスにベットして、最終的に手に入れることになった。

元々、僕は先代のRef.114060のオーナーだったこともあり、セラクロムベゼルインサートの耐傷性の高さとブレスレットのクラスプに仕込まれたグライドロック エクステンションシステム(2mm単位でブレスレット長を調整する機構)を高く評価していた。さらに、70時間となったパワーリザーブと優れたプロポーション、ビジネスで必須となるデイト機構を搭載するサブマリーナーデイトは自然な選択と言える。

Ref.114060を手放した理由のひとつ、シャツの袖(カフ)の下に収まらず時計が目立ってしまう欠点については、ロレックスブティックの女性の店員からのアドバイスを思い出し、シャツをオーダーしてカフ周囲を25cm程度まで既製シャツより2cmほど拡げれば克服できそうなことも気づいた。よくある、ベゼルのギザギザでシャツを痛めてしまった事例も、カフの下に収まってしまえば問題にならない。バカみたいな話、今まで既製シャツのカフ周り(凡そ23cmか)を基準に薄い時計を選んできたのだが、選ぶ時計に合わせてシャツをオーダーするという逆転の発想が全く無かった。僕は元々ダイバーズウォッチが好きだったのだが、スーツを着るようになってその趣向は封印してしまったのは実にもったいないことだ。さっそく、麻布テーラーでシャツを数枚オーダーして、上手くフィットするようであれば、ダース単位で揃えたい。何せ納期は1カ月ほどかかるのだ。

時計とシャツのカフ周りの問題が克服できたとしても、やはり腕周りと時計の大きさとのバランスはそれなりに均衡せねばならない。僕の16cmの細い腕周りにサブマリーナー デイト41は、ギリギリ破綻していないように思う。

SUBMARINER Ref.126610LN
16cmの細い腕周りにも均衡するサイズ感

ほぼ無敵と思われるCal.3235については、僕個人として全幅の信頼が置けていない。というのは、2018年に所有していたデイトジャスト41のCal.3235が原因不明のトラブルに見舞われ、日差30秒ほど遅れるようになり、日本ロレックスで修理することになってしまったからである。この時、日本ロレックスから説明らしい説明を受けることができなかったため、不信感が増幅されてしまった。しかし、あれから2年余りが経過している。ロレックスのことだから何らかのブラッシュアップを図っているはずだ。そう期待しながら、精度の様子見をしているところだ。僕の個体は概ね日差△2秒、デイトの切替は零時7分ごろで推移している。遅れ基調なのが気になるが、合格点ではないだろうか。

さて、装着感である。ブレスの幅が広がり、接地面積が増えたからであろうか、装着感は非常に高い。時間帯によって浮腫みなどで、窮屈に感じればグライドロックエクステンションを1ノッチ(2mm)ずらす。

SUBMARINER Ref.126610LN
ライドロック エクステンション機構は2mm単位、最大2cm調整幅を可能とする
SUBMARINER Ref.126610LN
やや幅を増したクラスプは時計本体の安定性に寄与する

それだけで心地よさが復元される。文字通りグライドするためのレールの上を走るベアリングが仕込まれているため、クラスプは厚く、幅広い。ロレックスの大半のブレスレットはクラスプに向けて急こう配のベベルトが設けられているが、新型サブマリーナーはそれが緩やかである。ただし、先代と異なり、ラグとブレスレットリンクまでの「段差」は片側2.7mmと、先代と比較して片側0.85mm分に縮まっていることから、Ref.116610LNのようなケースからブレスレットに移行する際の「唐突感」はかなり緩和されている。

SUBMARINER Ref.126610LN
ラグの最低部の太さは約2.7mmである

また、手首を外側に曲げたときのリューズガードの肌へ干渉が緩和されたような気がした。調べると、リューズは0.1mm小径化され、リューズガードは隆起部が1mm短くなったようだ。この効果は意外と大きいと思われる。オイスターブレスレットは904Lスチールのサテン仕上げに統一されていて、好感が持てる。デイトナやデイトジャストのようにセンターリンクがポリッシュ(鏡面)された仕上げは僕の好みと大きく外れてしまうのだ。もちろん、このRef.126610LNと同時にリリースされたサブマリーナー41シリーズのRef.126613 (スティール&イエローゴールド)、Ref.126618 (イエローゴールド)、Ref.126619 (ホワイトゴールド)はセンターリンクがポリッシュされている。

時計としての佇まいはツールウォッチとして、より洗練されてきたと言っていい。ロレックスを身に着けているよりは、ダイバーズウォッチを身に着けているという実感が湧く。ちなみに僕はダイビングを全く嗜まないので、ダイバーズウォッチの何たるかを語るに浅薄に過ぎる。ただ、本当にダイビング、それもプロダイバーはサブマリーナーを身に着けないであろうことは容易に想像がつく。僕はダイバーズウォッチに潜む思想-すなわちシンプルにして堅牢であること‐に惹かれるのだ。

それでも気になってしまうのは、資産価値としてのサブマリーナー41である。定価96.5万円(税込)を嘲笑うかとのごとく、二次流通市場の初値は208万円をマークした。どうやら、正規代理店で入手できた人がそのまま並行輸入店に駆け込み160万円で売却し、63.5万円の鞘を抜き、並行輸入店が48万円の利益を得る構造だ。これ自体は昔から繰り返されてきたので珍しくないのだが、コロナ禍によって海外からの流入が途絶えてしまっている現状、正規代理店から在庫を攫って販売せざるを得ない状況が透けて見える。しかし、これだけ大きな金額を時計に費やすことを可能にしているのは、どうしてだろうか。多くの販売店で無金利でローンを提供しているのは、その負担感を希釈するためである。時計自体の価値が上昇している現在であれば成立するが、多額のローンだけが残るという事態も想定されうる。だから、僕ができるアドバイスは、手持ちの価値の上がった時計を下取り交換することで強かに交渉してほしいということである。そうでなければ、手を出してはいけない。

世界中でロレックス相場が制御不能なまでに高騰してしまっている理由は、正規代理店に赴いても現物が見られないからだと思う。僕は、この嘆かわしい現状を打開するために、ロレックスは試着用のスポーツモデルを正規代理店に置くべきだと思う。何ならムーブメントを除いたモックアップでもよい。ユーザーは高騰した相場が試着した時計に見合うものか今一度考えてみると良い。そうすれば、これほどまでに相場が高騰することはないはずである。要は、皆現物が見られないゆえに、想像力を掻き立てられ、その結果、相場が上がってしまっているのである。

今後も相場がさらに上がり続けるのか僕にもわからない。しかし、この不確定要素こそロレックス相場の“リスク”の本質である。

SUBMARINER Ref.126610LN
コントラストがより鮮明となったフォント

ダイアルのディティール。ダイアル径は30.3mmと先代と比較して1%(0.3mm)分拡大された。最も顕著なのは、6時位置のバーインデックス下のコロネ(小冠)のプリントだ。「SWISS 」と「MADE」のスペースに挿入されている。

SUBMARINER Ref.126610LN
6時位置の王冠マークは今回加わったディテール

フォントの全体は、少し暗い印象のあった先代機と比較して、かなりビビッドなフォント配色になった印象だ。長針の長さがミニッツトラックに届くように延長されたこと、針全体の幅が拡張されたことで、文字盤の一体感は保持できていると思う。マニュファクチュール(完全自社製)を謳うロレックスではあるが、針に関しては外注調達しており、しばしば御座なりになることがある。

その代表例が2010年に39mmに直径を拡げて登場したエクスプローラーⅠ Ref.214270であり、36mmの先代機Ref.114270の針をそのまま流用してしまったことで長針がミニッツトラックから違和感を感じるほど離れてしまった。後にデザイン変更により解消されたが、入手した僕としては面白くない思いをした。しかし、今作では、ケースサイズの微増とダイアルデザインの微調整と針のデザインが完全に同期しており、ここにはサブマリーナーに対する並々ならぬ力の入れ様を感じるところだ。

SUBMARINER Ref.126610LN
より長く、太くなった針

ベゼルの操作感は滑らかで心地よい。一周120クリックの回転ベゼルはセラミック製のベゼルインサートが嵌め込まれていて、サファイヤクリスタルと同等の2,500HVまで傷を寄せ付けない。僕がこのベゼルにより多くを望むとしたら、ベゼルのモノブロック(一体成型)化くらいである。セラクロムのモノブロック化を実現しているのは、現行型のデイトナくらいである。こちらはタキメーターベゼルなのでケースに固着しているから技術的課題は高くなかっただろうが、回転ベゼルとなると可動部の摩擦や、靭性も素材特性として必要になってくることだろう。これらの課題を解決したモノブロックのセラクロム回転ベゼルの登場を僕は期待している。

SUBMARINER Ref.126610LN
16㎝の腕周りの僕はコマを3つ取り外した

さて、1週間ほぼ着けっ放しで過ごしてきた新型サブマリーナーデイト41は、「体重を維持しながら体脂肪率を落とす」肉体改造を敢行したといって過言ではないだろう。これはダイエットといった生ぬるいものではない。コンマ数ミリを削ぎ落す分、確実にどこかに付加しなければならず、同時にバランスを均衡させるという途方もない調整を要する試練を潜り抜けてきたのだ。しかし、その効果は非常に大きな実感として得られるもので、僕はRef.126610LNはサブマリーナーデイト史上最高傑作だと早くも評価している。そして、マーケットも間もなくそのことに気づくだろう。だからこそ、僕はこのサブマリーナーデイトをほど脊髄反射的に入手に動いた。ロレックスは41mmという数字を強調することで、意図的にその期待値の高さを冷却しようとしたに違いない。さもなくば、熱狂にロレックス自身が飲み込まれてしまうからである。

しかし、マーケットはそれほど長くは騙され続けないのである。

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SUBMARINER Ref.126610LN
クロマライトによる夜光の持続は8時間
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