K.Iwahashiが語るラグジュアリー論

意外にも面白い『バネ棒』の発明者を突き止める旅

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意外にも面白い『バネ棒』の発明者を突き止める旅
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'79年生まれ。1浪2留の追加モラトリアムを経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融セクターのIT部門にて(マジメに)勤務。 時計や車などのラグジュアリー、服飾、DTM、それらにまつわる書籍の記事が得意です。

HODINKEEからバネ棒にまつわる興味深いリサーチを紹介します。こういう知的な追求はJack Forster氏の得意分野ですね。

僕個人もバネ棒には思い入れがあって、初めてのPATEK PHILIPPE(パテック・フィリップ)カラトラバ(Ref.3796R)を手に入れた時、革ベルトを繋ぎ止めていたのは、見たことも無いくらい太い、やはり18Kローズゴールド製のバネ棒でした。

それまで慣れ親しんできた細いバネ棒とはまるで異なる太さのため、普通の革ベルトのバネ棒用のホールには収まらないと思うほどでした。しかも、バネの力はとても弱かったので、パテック・フィリップ・ジャパンに予備のバネ棒の取り寄せを依頼しようと価格を尋ねたところ、一本8,000円と言われ断念した思い出があります。

僕は時計を購入すると、必ずと言っていいほどブレスレットを革ベルトに付け替えます。こういう作業は大抵、夜中に思いつき、作業に取り掛かるのですが、思わぬ傷をラグに刻んでしまったりして眠れない夜を過ごしたことは、二度、三度では聞かないはずです。

バネ棒というのは、考えれば考えるほど奇妙な存在です。8千円の時計も、800万円の時計も全く同じバネ棒を付けていることは珍しくありません。金の時計には金のバネ棒が付いていることもありますが、基本的な構造は同じです。

つまり、筒状のチューブの両端から内蔵されたスプリングの力によってピンが突き出ていて、そのピンは時計のラグの穴に引っかかることによってベルト/ブレスレットと時計本体をつなぎ留める仕組みです。そのピンを外すにはバネ棒外しという工具が必要で、注意深く取り扱わないと、10秒の作業でラグが10年分傷ついてしまうことにもなりかねないものです。

また、バネ棒というのは洗浄されたり、修理されない使い捨ての消耗部品です。

バネ棒というのは一体誰が発明したものでしょうか?時計をベルトに取り付ける方法の特許は数多あれど、バネ棒そのものの特許は探すのに骨が折れたそうです。

バネ棒の起源を探るには、まず「腕時計」の起源から始めなければなければなりません。腕時計は19世紀末から急速な発展を始めたと言われていますが、当時は女性がブレスレットの装飾として用いるのが主で、精度は重要視されなかったようです。精度が求められる時計というのは懐中時計が担っていた時代です。

時計を最初に体に身につける方法を特許出願したのが、1898年のコネチカット州のM.Peirsonによる手の甲に懐中時計を仕込む方法です。

軍事目的で最初に腕時計が広まったのは、第二次ボーア戦争(1899-1902)です。その当時はストラップに懐中時計を取り付けると言ったかなり大掛かりなものでしたが、かなり便利であるということがわかりました。その後の第一次世界大戦では時計のケースにワイヤーラグ(パネライのラジオミール!)に革ベルトを縫い付けるという形が採られました。大戦の少し前にはカルティエから男性用のサントス・デュモン、女性用のトーチュが発売されました。

左はカルティエ タンク。右はトノー

ただ、この頃にはまだバネ棒は存在しておらず、カルティエにしてもネジで棒を固定する方式を採っていました。このように、初期型の腕時計の明らかな欠点は簡単にベルトが交換できないことでした。

Jack Forster氏による数々の特許アーカイブの発掘により、最終的に辿り着いたのは、Charles Depollierによって1915年に出願された特許が、今日のバネ棒にまさに一致するものだったのです。彼はアメリカの有数の時計メーカーであったJaques Depollier & Sonsの2代目社長で、Waitham(ウォルサム)製のムーブメントを搭載した時計で、「Depollier」ブランドの時計を販売していました。


しかし、ここで早急に結論を早まるJack Forster氏ではありません。さらに探求すると、意外な事実が判りました。それは1882年にT. R. Booneに認可された特許「カフを留めるための方法」で用いられるのが、まさにバネ棒だったのです。つまり、近代の腕時計が登場するずっと前よりバネ棒そのものは存在していたのです。

それでもやはり、時計とベルトを留めるための発明は Depollierが最古であることから、彼が発明したものかもしれないとForster氏は結んでいます。

長文ですが、時計の知的旅行に出かけてみませんか?

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'79年生まれ。1浪2留の追加モラトリアムを経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融セクターのIT部門にて(マジメに)勤務。 時計や車などのラグジュアリー、服飾、DTM、それらにまつわる書籍の記事が得意です。
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