K.Iwahashiが語るラグジュアリー論







Calibre de Cartier

アバター
WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
'79年生まれ。1浪2留の流浪期を経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融業界で会社員として勤務。英文翻訳が得意。 ラグジュアリー全般に関する考察と海外発の腕時計情報をいち早くお届けします。

iPhone4を手にして以来、腕時計を身に付けるのを止めようと思っていた。そう思う人 は少なくないようで、星野リゾートの代表取締役である星野佳路さんもその中の一人であるようだ(週間ダイヤモンド2009/5/15号)。 実践するところまではいかないにしても、私自身、iPhone4を手にして時計に対する熱がやや冷め、時計を装飾品と割り切ったところで、日経ビジネス2010年6月21 日号のSIHH2010特集に紹介されたCartierとJaegerLeCoultreの新作に目を奪われてしまった。

Cartierは初のInHouse Movementを積んだCalibre De Cartier、JLは非常に均整の取れたMasterChronographを発売していた。 Cartierは従来主にETAからムーブの供給を受けていたが、スウォッチグループ以外の メーカーへのETAムーブ供給が停止される2010年問題に対処すべく自社ムーブ採用に至ったようだ。

しかし、自社開発というのは誇張かもしれない。というのは、ローターにセラミック製ボールベアリングが仕込まれていることやツインバレルを採用しているところを見ると、この1904MCはJLが開発ないし製造を手掛けたのではないだろうか(工房までJLと 同じラショー・ド・フォンにある)。

そもそもCartierとJLは同じ資本(リシュモン)傘下にあるので、部品の共有や技術供与はあって不思議ではない。ムーブメントに信頼感のあるJLなので、もしそうならそれはそれで一顧客としてむしろ喜ばしいのだが、これはあくまで私の邪推に過ぎない。

三子玉川の髙島屋でMasterChronographとCalibre de Cartierを実際に触れてみた結果、後者を購入することにした。今回かなり長い間購入を躊躇したのだが、その理由が特殊なベルト形状にある。Cartier はダブルデプロワイヤントバックルというD(あるいはC)バックルを採用していて、ベルトは12時、6時側とも穴のない特殊な仕様だ。

サイズ合わせはベルトを折り返すことによって調整する。それゆえ、Cartierブティックではベルトの変形を嫌ってDパックルが装着されていない状態でショーケースに飾っている。これでは試着ができず、着け心地が確認できない。しかも純正の交換ベルトは表材の種類が豊富であるにもかかわらず裏材が革のみなので猛暑の時節、汗の浸透が非常に心配だった。Jean Claude Perrinにオーダーするにしても スペシャルオーダーになるので、高額となる恐れがある。 

デリバリーから数カ月経った今なお在庫不足の状態が続いており、正規店では都内に3店舗しか在庫がなく、定価の8割ほどの並行輸入店ではほぼ在庫が無い状態だった。私の場合運よく安く正規品を新品で手に入れたのだが、前段のベルトの仕様のせいで代金を支払って初めて着けることができた。購入は高リスクな賭けでもあった。 

普段31mm径のref.3796を身につけているので、42mmのCalibreは非常に大きく感じた。しかもベル卜の革(アリゲーター)が非常に固く、当初の着け心地は「最悪」で内心激しく後悔した。ところが、しばらくすると革が馴染んできたのか印象が激変した (J.M.WESTONの靴のよう)。ラグが大きく湾曲していることと、9.63mmの薄いケースのおかげで吸いつくような装着感が得られつつある。そして心配していた汗対策だが、この裏材には汗が染みにくい加工が施されているようで、滝のように汗をかいても不快感はあまりなかった。何より、サイズが微調整できるのが素晴らしい。これは 一度慣れてしまうと、従来のベルトには戻れなくなるかもしれない。これなら純正の交換 ベルトでも問題なさそうだ。

カスタマーセンターに確認したところ、アリゲーターベルトの交換は¥35,700だった。オーバーホール基本料金は¥47,200とのこと。文字盤は妻の意見を反映し黒にした。当初はシルバーを考えていたが、非常にシャープな雰囲気を醸す黒フェースにして正解だったと今は思う。

というのは、針に夜光塗料が塗布されているので、スポーティなフェイスがよく合うのだ。スーツにもカジュアルにも着回しが利くのは実にすばらしい。

心臓部であるムーブメントは流行りのシースルー越しに覗くことができる。ここは宝飾店の意地を見せてローターが18金製であったなら見せる意味もあっただろうが、美しさという観点で言えば、ROLEXに近い無味乾燥なもの。ROLEXの大半のモデルが、シースルーバックでないのは賢明なことだと改めて思う。 

時計そのものを一生ものとは考えていないこともあり、リセールバリューをある程度考慮して購入した。道具としての時計ではなく、装飾品として割り切れればCartierという選択もありだと思う。

この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
'79年生まれ。1浪2留の流浪期を経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融業界で会社員として勤務。英文翻訳が得意。 ラグジュアリー全般に関する考察と海外発の腕時計情報をいち早くお届けします。











Copyright© 鰯の飽くなき収集癖 , 2010 All Rights Reserved.