GaryG氏がHajime Asaoka 「Tsunami」を選んだワケ

QUILL&PADDのGaryG氏がHajime Asaoka「Tsunami」購入記を公開しましたので紹介します。

Hajime Asaokaは独立時計師 浅岡肇氏が2000年代に創業した時計ブランドです。何と独学で時計製作を学び、2009年に日本初の複雑時計機構トゥールビヨンを発表。現在は30名余しか会員の存在しない独立時計師アカデミーの会員の一人として活躍中の方です。

浅岡肇氏は独学で時計製作を学んだ方ですが、無学ではありません。東京藝術大学美術学部デザイン科を卒業されていますので、若い頃より知的土台は確立されている方ですし、Twitter(@HajimeAsaoka)での投稿を読むと、非常に教養が広く、深いことがわかります。

Hajime Asaokaの時計を購入すると言うことは、「消費者」ではなく、浅岡肇氏の「パトロン」になることと同義だとGaryG氏は記しています。

時計としてのTsunamiの魅力は「スポーツ」と「ドレス」のギャップを埋め合わせる存在であることです。それは多分にオーデマ・ピゲ「RoyalOak」に代表されるラグジュアリースポーツの系譜に属するものであるのかもしれません。

直径37mmの小径ケースには異例の16mmの巨大なチタン製テンワはまさにそんなギャップを象徴するかのようです。

GaryG氏がTsunamiを知ったのが2012年。それから何度も接触を試みたものの、失敗に終わったようです。浅岡肇氏とコンタクトを取るには彼のビジネスパートナーである櫻井教尊氏を通さなければ不可能であることはよく知られていますが、最終的にGaryG氏は日本人コレクターのつてを頼って2015年にようやくオーダーまで漕ぎ着けたそうです。

Tsumamiのダイアルはアール・デコを想起させるセクターダイアルに、12時位置に下を向いたNTTドコモタワーを思わせるアプライドインデックスが印象的です。

GaryG氏がオーダーして以降、ある大手時計ブランド(多分オメガ)がチタン製テンワの特許使用に関する係争を主張したため、スチール製の15mmのテンワに仕様変更したり、浅岡氏がクロノグラフ製作に没頭したこともあり(この製作過程はTwitter上で公開されています)、納期は当初の2016年から2018年に変更となったそうです。

Hajime-Asaoka-Tsunami
GAryG氏が現物を初めて目にしたのが2018年のバーゼルワールドの夕食の席。そして、最終調整後、正式に納品されたのはその6ヶ月後ということですから、相当な辛抱を強いられたことでしょう。

かくして、出来上がったTsunamiは、GaryG氏のコレクション、Philippe Dufour「Simplicity」と並べても、その存在感はまったく引けを取らないと大満足なご様子です。

「控えめに」不満があるとすれば、ラグの外側のバネ棒用の穴はない方が良かったことくらいだということです。精度面では携帯日差が+9秒とやや進みが早いように思いますが、GaryGは安定して進んでいるので問題ないとしています。

この時計のお値段は26,700ドルということで、日本円で約300万円。僕個人から見てもかなりお買い得だと思います。ただし、オーダーを入れるためには金額面以外のハードルが高そうです。むしろ、それは購入するための「審査」のようなものでしょうか。

僕がHajime Asaoka氏の時計が極めて貴重な存在だと思うのは、この時計がフリースプラングの調速機構を持つ日本製唯一のムーブメントであることです[2018年10月現在]。そのことは浅岡氏も認めています。


いや、本当に良い時計ですね。

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