K.Iwahashiが語るラグジュアリー論







非帯磁性合金Nivachronヒゲゼンマイを搭載したSwatch FlymagicはSistem51の高級版だ!

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'79年生まれ。1浪2留の流浪期を経て'05年に早稲田大学商学部卒業。 現在は金融業界で会社員として勤務。英文翻訳が得意。 ラグジュアリー全般に関する考察と海外発の腕時計情報をいち早くお届けします。

2018年8月にSwatch Group(スウォッチグループ)とAudemars Piguet(オーデマ ピゲ)が非帯磁性合金Nivachronの共同開発を発表して約半年、遂にこのチタニウム合金をベースとしたNivachron製ヒゲゼンマイを搭載した時計が発表されました。その名はFlymagicです。

そして、このFlymagicは2013年に同社がリリースしたSistem51をベースにしています。Sistem51は僅か51のパーツからなる自動巻ムーブメントで、銅、ニッケル、亜鉛から成る非帯磁性合金ARCAPをコンポーネントに採用し、90時間のパワーリザーブを備えています。脱進機には調速機構がなく、レーザーによって焼付固定されます。これらの製造工程は全て機械によって自動化されていて、200ユーロの価格設定とともに驚きをもって市場に迎えられました(ただ、スウォッチグループの持病ともいうべき製造の歩留まりの悪さから実際にデリバリーが開始されたのは発表から1年近く経ってからだったと記憶しています。その間工場の火災もありました)。

ヒゲゼンマイとは伸縮運動することで時計の精度を調節する部品です。この部品は長らくニッケルと鉄の合金で作られていたのですが、鉄が磁力を帯びてしまうと精度が大きく狂ってしまうことが大きな課題でした。特に携帯電話の普及と強力なネオジム磁石の登場は大きな脅威となり、帯磁への対応策が防水対策に勝るほどニーズが高まったのです。そこで、各社はヒゲゼンマイに非帯磁性素材を採用する試みに奮闘しました。

その結果、2000年代に入り、ロレックスがニオブ、ジルコニウム、酸素を合金化した非帯磁性合金パラクロムをヒゲゼンマイ に採用し、新たな時代の幕開けとなったのです。

さて、非帯磁性のヒゲゼンマイ といえばスウォッチグループはすでにシリコンをベースにしたシリシウムをオメガなどに採用しています。シリコンは耐磁性を持ち、耐久性に優れ、温度変化にも強いという特性を持ちます。なぜ、新たにNivachronを開発する必要があったのでしょうか?

これは完全な推測ですが、シリコンヒゲゼンマイはあまりに多くの時計メーカーが開発に関わりすぎていて、独占的に利用することができないからではないでしょうか。シリコンヒゲゼンマイを最初に開発着手したのはユリス ナルダンとMimotecのジョイントベンチャー(JV)、Sigatecですが、その後CSEMという団体を通じてロレックス、パテック フィリップ、スウォッチが参加した経緯があります。したがって、特許関係が複雑に絡み合っている可能性があり、これが新たな非帯磁性素材の開発に着手する動機になったのではないでしょうか?

加えて、ブランディングの問題もあります。高級機にはNavachron、中堅以下にはシリシウムという使い方もできます。

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Photo via MONOCHROME WATCHES

さて、このFlymagic。ケースサイズは45mm径、14.8mm厚となかなかヘビーウェイトなサイズ感です。文字盤はオープンワーク(スケルトン構造)となっており、透明な自動巻ローターが文字盤上に配されています。針は時、分の2針で12時位置に反時計回りに回転するスモールセコンドという不思議な構成です。

Sistem51からパーツが15個増え、日差 +/- 7で調整され出荷されます。

Swatch Flymagicはドイツの偉大な物理学者カール・フレデリッヒ・ガウス(Carl Friedrich Gauss )の誕生日に因んで2019年4月30日に1,500スイスフランで発売される予定です。

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