![](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/H-Moser-Streamliner-Flyback-Chronograph.jpg)
H.モーザーよ、お前もか! ストリームライン フライバック クロノグラフが登場!
2019年10月のランゲ&ゾーネ オデュッセウスに続き、H.モーザーよ、お前もかというべき新作 Streamline Fryback Chronograph(ストリームライン フライバック クロノグラフ)Ref.6902-1200が発表された。同時にデリバリーも開始されている模様だ。
![Moser Streamliner](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Streamliner-2.jpg)
各メディアにおいていわゆるラグジュアリースポーツウォッチとして捉えられているものの、僕はこの時計をラグスポというよりスポーツウォッチとして解釈している。なぜなら、ラグジュアリースポーツの条件である薄さがこの時計には備わっていないからだ。
初めてその外観を確認した時、僕の頭に浮かんだのはポルシェデザインとIWCが共同で創り出したオーシャン2000だ。
![IWC OCEAN 2000](https://timeandtidewatches.com/wp-content/uploads/2019/02/IWC-Porsche-Design-Ocean-2000-10.jpg)
チタン製のケースを纏うこの時計は防水性能2,000mを誇る、まさに純然たるスポーツウォッチだ。4時位置に配されたリューズに特徴的なシングルブロックのブレスレット駒はその影響を色濃く受けた証だろう。
ただし、このシングルブロックのブレスリンクはオーシャン2000が直線的であるのに対し、H.モーザーはストリームラインの名に恥じず“流線型”を採用している。防水性に関してはオーシャン2000には遠く及ばないが、120mとなかなか頑張っている。おそらくはパテック・フィリップ ノーチラスの防水性能を意識したのだろう。
![OMEGA Fkightmaster](https://hodinkee.imgix.net/uploads/images/1565292102500-7kj9yx8e60i-1cdc607f670c33977b3fffc049b182d7/flightyMC2.jpg?ixlib=rails-1.1.0&fm=jpg&q=55&auto=format&usm=12&fit=crop&ch=Width%2CDPR%2CSave-Data&alt=)
一方で、グレーのフュメダイヤルは70年代的である。外周の1/6秒スケールが凹凸形になっているのが、とりわけそう感じさせる。これは、オメガが70年代に製造していたフライトマスターの影響を受けているからだろう。
![Singer Reimagined Track1](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Singer-Track1-Chronograph-Reimagined-6.jpg)
近年の時計でこのストリームラインに酷似しているのは、日本には未展開のSinger Reimagined SAのTrack1だろう。クッションケースに4時位置のリューズ、2時と10時のクロノグラフのプッシュボタンがまさに符合する。実はこのTrack1とストリームラインのムーブメントは同じAgenhor(アジェノー)社が提供している。前者はAgengrapheと呼ばれるクロノグラフで、3つのコーアキシャルカム機構、歯車が存在しないクラッチ機構を備えた60分積算計、60時間(!)積算計を備えたクロノグラフだ。後者は60時間積算計を廃し、フライバック機構(リセットで帰零と同時に計測開始)を備えている。
![H.Moser Streamline Flyback Chronograph](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Streamliner-5.jpg)
434もの部品を組み込んだムーブメントは実に壮麗だ。しかし、最も驚かされるのは、このムーブメントが自動巻であるという点だ。では、自動巻ローターはどこにあるのだろう?カール・ブヘラのような、ムーブメントの外周を回転するペリフェラルローターを想像したが、違うようである。ローターは文字盤とムーブメントの地板の間に挟まれており、トランスパレントバックから窺うことはできない。これは毎時21,600振動するテンプ周りも同様である。二重香箱に蓄積されるパワーリザーブは54時間と実用面では充分だろう。
![H.Moser Streamline Flyback Chronograph](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/H-Moser-Cie-Streamliner-Flyback-Chronograph-Automatic-Review-11.jpg)
しかしながら、文字盤からこの時計がクロノグラフだと想像できるだろうか?まず、クロノグラフに備わっているはずのサブダイヤルが存在しない。針を全てセンターに配しているからだ。クロノグラフを作動すると、赤いクロノ秒針が1/6秒を刻む。1周すると、シルバーの細い長針が分単位でジャンプする。時刻表示は時針、分針の2針表示に割り切っている。時刻表示の秒針まで追加してしまうと、針を全てセンターに配列することは視認性の観点からも現実的ではなかっただろう。
![H.Moser Streamline Flyback Chronograph](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Streamliner-3.jpg)
H.モーザー&Cie.のCEOエドゥアルド・メイラン氏がRevolutionに語ったところによると、ストリームラインはブレスレットありきでデザインされたということだ。ケースの形状がムーブメントの制約を受けることを考えると、モーザーらしさを醸成するには、ブレスレット形状がユニークかつエルゴノミクスを満たしてしなければならないという判断だ。クラスプは継ぎ目を感じさせないほど薄く造られた観音開きのフォールディングバックルで、各リンクの継ぎ目の傾斜した部分はポリッシュ、平滑面はブラッシュ仕上げと日常での傷の付きやすさを考慮すると、よく練られた構造だと思う。
![H.Moser Streamline Flyback Chronograph](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Streamliner-6.jpg)
ブレスの調整コマはプッシュピン(押しピン)で連結されており、薄いブレスレットの宿命でもある。欲を言えば、カルティエ サントスのような、工具不要なリンク調整機構を導入するとより望ましいが、何せモーザー初のブレスレット仕様の時計だ。無理は言えまい。
![H.Moser Streamline Flyback Chronograph](https://koichiiwahashi.com/wp-content/uploads/2020/01/Streamliner-4.jpg)
ケースの直径は42.3mmと数値上は大ぶりだが、ラグが存在しない分、適度なサイズ感といえるだろう。厚みは14mmとマッシブなので、腕の細い人は機会があれば腕に乗せることをお勧めしたい。
しかし、クラシックな時計をリリースしてきた(H.モーザーに関してはファンキーというのが適切か)時計メーカーが続々とラグジュアリースポーツ/スポーツウォッチに参入してきているのを見ると、地球温暖化が僕たちのライフスタイルを一変していることを痛感する。欧州を最後に訪問して久しいが、きっと近年のヨーロッパ大陸の猛暑は酷なことだろう。
基本情報 | |
メーカー | H. MOSER & CIE. |
モデル/型番 | STREAMLINER FLYBACK CHRONOGRAPH AUTOMATIC/Ref, 6902-1200 |
直径×厚み | 42.3mm×14mm |
ケース素材 | ステンレススチール |
防水性能 | 120m |
価格/限定 | 38,000ユーロ/100本 |
ムーブメント情報 | |
キャリバーNo. | Cal.HMC 902(アジェノー社製) |
巻上方式 | 自動巻 |
振動数 | 21,600 |
複雑機構 | フライバック クロノグラフ、コラムホイール |
パワーリザーブ | 54時間 |
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