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  • 時計業界の市場動向を中心にまとめました。

2018年のスイス時計輸出は強気に始まり、弱気に終わったようです

スイスの時計業界の2018年は活況であったことが全世界輸出指標から裏付けられました。

時計の卸販売売価は2017年対比で6.3%の上昇で212億ドルに達しました。

2018年は2015年(-3.3%)と2016年(-9.9%)の大幅下落以来2年連続の増加となり、増加幅としてはここ6年間で最も大きい年となりました(2012〜2014年の増加率は3%未満)。

2018年1月〜12月の輸出相手国TOP10
順位 金額(億円) 推移率%
1 香港 3,298 +19.1
2 米国 2,435 +8.2
3 中国 1,887 +11.7
4 日本 1,474 +9.1
5 英国 1,355 -4.4
6 ドイツ 1,235 +4.3
7 シンガポール 1,216 +0.7
8 フランス 1,176 +9.1
9 イタリア 1,112 -14.3
10 アラブ首長国連邦 1,000 +1.7
出典:Federation of the Swiss watch industry スイスフランから円換算は筆者

2018年は上半期と下半期、活況だった極東地域と落ち込んだ欧州、続伸した機械式時計と続落した安価なクォーツ時計、待ち侘びた米国の復調と不調が懸念される中国と何もかもが相反する状況でした。

global swiss export 2011 to 2018
2011年から2018年にかけてのスイス輸出推移

2017年下半期に始まったスイス時計の回復は2018年初めにピークを迎え、2018年上半期は前年対比10.6%増で着地しました。このブームを牽引したのは極東地域で前年を15.4%も上回りました(アジア全体では12.2%増)。

各国への輸出高推移

2017年下半期に始まったスイス時計の回復は2018年初めにピークを迎え、2018年上半期は前年対比10.6%増で着地しました。このブームを牽引したのは極東地域で前年を15.4%も上回りました(アジア全体では12.2%増)。

最大のマーケットである香港(1位)は前年対比19.1%増、中国11.7%増(3位)、日本(4位)9.1%増、10位圏外の韓国(11位)は25.7%増と軒並み伸びました。

しかしながら、年半ばにして伸び率は鈍化。日本は夏頃ピークアウトしてしまいました。

要因は複数考えられ、米中貿易摩擦の他、ラグジュアリー時計とスマートウォッチの競合をスイス時計協会は挙げています。

2018年9月、16か月連続で増加していた輸出高は初めて7.4%下落し、12月には再び2.8%下落しました。欧州地域の下落が5.8%と大きく、極東地域は中国が10.1%下落したことが響いて地域全体で3.2%下落しました。

中国は2017年に18.8%と破竹の勢いで伸びていたマーケットなだけに、2018年の11.7%増加は随分と見劣りします。ボーム&メルシェのCEO、Geoffroy LeFebvre氏も中国の減速を認めています。

背景には中国経済が2018年第4四半期に+6.4%と1990年来最も低い経済成長率を記録したことが高級時計の消費に歯止めをかけているのかもしれません。

2018年の下半期の減速が2019年に波及するにしても、輸出の伸びは続くとみられています。

ただ唯一この流れに逆行しているのは国別では2番目に大きいマーケットでもある米国で、3年にも及んだ下落(通算△13.7%)が8.2%の増加に転じました。米国に限っては12月も含めて好調であった2018年でした。しかしながら、あくまで輸出での話なので、小売市場は12月の株式市場の下落を受け低迷したと伝えられているので、2019年以降の動向を注視する必要がありそうです。

クォーツ時計の縮小が止まらない

2018年は機械式時計の割合は3.9%増加し、752万本の時計が輸出されました。これはスイスの時計輸出(金額ベース)の実に82%を占めます。一方でクォーツ時計は5%減少し、輸出された時計は1,621万本。2011年以降通算して3割減少したことになります。

クォーツ時計は本数では時計全体の68%、金額ベースでは28%を占めるものの、Apple Watchなどのスマートウォッチに苦戦を強いられていることが主たる敗因であるようです。別の見方では、スイス製を謳うためにはスイス国内の製造比率が60%以上を要件とする2013年に導入された規制もコスト増から撤退を余儀なくされる要因であるとされています。

ますます高級時計が収益の柱として存在感が増すスイスの時計製造業です。

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