初めて高級腕時計が欲しいと思う若者へ2018年に最もオススメしたい時計
「若い人たちに腕時計の素晴らしさを伝えたい」というのが最近僕が思う使命であります。
僕が20代前半の頃は時計がそれほど高価でなかったです。ロレックスのスポーツモデルでも30万円台でしたから。でも、今はスポーツロレックスの相場は当時の3倍近くします。
ラグジュアリーとして成功すると、価格は上昇する一方です。これはラグジュアリーの法則みたいなものです。上がりきってしまった相場はよほどの天変地異がない限りひっくり返りませんので、諦めましょう。
じゃあ、ラグジュアリー時計を諦めるべきかというと全然そういうことではありません。というのも、エントリーモデルをお値打ちな価格で提供するブランドもあるからです。
そのうちの一つが今回紹介するボーム&メルシェのボーマティック(ref. MOA10436)です。この時計を見るために、名古屋の久屋大通にあるタナカさんにお邪魔してきました。
ボーム&メルシェ(BAUME&MERCIER)自体、あまり馴染みのないブランドかもしれません。カルティエやジャガールクルト、ランゲ&ゾーネを擁するリシュモングループにあって、1830年創業と最も古い歴史を持つメゾンです。北米での知名度はそこそこあると思います。
グループ内ではエントリー向けの時計を作っていて、定価が30万円台と廉価にも関わらず並行輸入でさらに半額になって叩き売られている可哀想なブランドでもあります。積んでいるムーブメントもセリタやETAのポン乗せなので仕方ないと言えば仕方ないのですが、そんな窮状を立て直すべく2018年は自社ムーブメントであるボーマティックを投入してきたワケなのです。
ボーマティックとは機械式時計ムーブメントの通称で、ボーム&メルシェと同じリシュモングループのヴァルフルリエが共同開発したモンスター級ムーブメントです。正式な型式はCal.BM-12-1975Aです。2018年のジュネーブサロン(SIHH)で発表され、大変な話題となりました。
どこがモンスター級かというと、パワーリザーブが120時間(5日間)もあり、耐磁性能は1,500ガウス、精度は-4秒/+6秒のクロノメーターCOSC認証付を非常に低価格で供給できる点です。
シリコン革命の寵児「ボーマティック」
これらは全てシリコン素材を多用している恩恵によって得られたイノベーションです。具体的にはヒゲゼンマイ、アンクル、ガンギ車がシリコン製です。シリコン素材は耐久性に優れ、摩擦係数が低いため、潤滑油が少なくても済むというメリットが得られるのです。したがって、オーバーホールは7年間は不要です。オーバーホール料金は税抜45,000円です。
シリコン素材の開発はパテックフィリップやロレックスなどのラグジュアリーブランドも開発していましたが、各社、非耐磁性金属素材にシフトしており、シリコン素材は廉価モデルを中心に普及していくとみられています。
競合ムーブメントとして、2013年にはスウォッチグループのTISSOTとETA社が共同開発したPOWERMATIC(パワーマティック)がパワーリザーブ80時間で先行していますが、ボーマティックのパワーリザーブは40時間分も長時間駆動し、精度面でもパワーマティックの6振動に対し、8振動のハイビートであることから安定性も優位にあると考えられます(一般的には高振動になるほど高精度となる)。
理論上はそうだとして、実際の精度はというと、あくまで目測ですが、日差−3秒です。クロノメーター規格の−4秒〜+6秒内に収まっているものの、+に調整してくれているとよりいいんですけどね。デイトの切り替わりは23:59近辺とややフライング気味です。
私の他に購入された方のツイートを拝見すると、+3秒という結果。タイムグラファーによる貴重なデータまでご提供いただきました。素晴らしい。
ありがとうございます!私は1日の実測で+3秒弱くらいでした。
フルに巻いた状態でのタイムグラファーの結果も同じような感じでした。私が持っている中では姿勢差一番少ないです。 pic.twitter.com/cCo6sY3KP9— shimarz (@schema_sangyou) 2018年6月13日
クロノスの広田さんによる携帯精度の所感も+3秒というところですね。
webChronos向けに、時計をテストしている。広田大絶賛のボーム&メルシエ「ボーマティック」とウブロ「ビッグバン ウニコ」。時間がないので左右の腕に巻いている。携帯精度はそれぞれ、3秒、6秒という感じ。テスターでは未計測。 pic.twitter.com/tN94ZfImtr
— HIROTA, Masayuki (@HIROTA_Masayuki) 2018年6月20日
このボーマティックを搭載するボーム&メルシェのモデルはCLIFTON(クリフトン)。白磁(ポーセリン)のような文字盤(ダイアル)にバランスの良い針、そしてなによりも10mmというスリムな厚みはかなり好感の持てるデザインです。
クリフトンBAUMATIC搭載モデルにはCOSC認証のクロノメーターモデルが用意されています。デザイン上の差異はCHRONOMETER表記と文字盤中央部の十字線があることです。
BAUMATICは審美性に特別優れたムーブメントではありませんが、緩急針がないことからテンワに2対の偏心錘の付いたフリースプラングであることが見てとれます。
ベルトはアリゲーター。膨らみを持たせたボンベ仕様で、革質については納得がいくレベル感。ちなみにメタルブレス仕様も用意されています。ベルトはクイックバレットで取り外しが容易です。特筆すべきは、ケースのラグにバネ棒用の穴が二つ用意されている点です。これによって、長さの微調整や湾曲したバネ棒の選択が可能となります。
まとめ
ボーム&メルシェ クリフトン・ボーマティックは初めて高級機械式時計を選ぶ若者に向けた最適な時計です。価格はクロノメーター仕様のモデルで35万円とかなり良心的。並行輸入価格の動向は気になるところですが、2018年6月現在で正規店での在庫もごく限られているようです。個人的にはクロノメーターモデルだけは流通量をコントロールして、価格下落を招かないようにして欲しいですね。
23歳でこの時計を購入して、30歳で初めてオーバーホールする際にさらに上のランクの時計を入手するロードマップを描くというのはいかがでしょうか?
一方で、若い頃からラグジュアリー時計に親しんできた30代以上のビジネスマンの抑え目な装いのお供にも良いと思います。例えば、謝りに行く時とかw あまり頻繁に発生すると困りますが。
米国でも2018年9月からデリバリー開始です。売れるといいですね。[topic color=”green” title=”【まとめ】に戻る”]【まとめ】ボーム&メルシェ クリフトン ボーマティック COSCクロノメーター
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