ラグジュアリースポーツウォッチに殴り込みをかけたウルバン ヤーゲンセン 『ワン・コレクション』
ラグジュアリースポーツウォッチ(ラグスポ)の系譜というのは、1970年代に故ジェラルド・ジェンタ氏がデザインしたオーデマ・ピゲ(AP)『ロイヤルオーク』とパテックフィリップ(PP)『ノーチラス』が発祥です。後先で言えばロイヤルオークが先発、それを見たPPがノーチラスを後に発表したのですが、いずれのモデルもジェラルド・ジェンタ氏が手がけたモデルです。
2010年代にこれらのモデルの取引価額は高騰し、入手が極めて困難な状況が続いています。僕は2013年にノーチラスの弟分のアクアノート(1997〜)を予約しましたが、当然今に至るまで入荷の連絡はないくらい需要が高止まりしている状態です。
ラグスポの定義は非常に難しいです。例えば、ロレックスのSUBMARINER(サブマリーナ)の現行Ref.116610LNは個人的にはラグスポだと思いますが、このモデルはスポーツウォッチと呼びます。その分水嶺となるのは、ケース薄さが10mm以下かどうかという外観での判別です。サブマリーナの厚みは13mmですから、この点でラグスポではなくスポーツウォッチの括りに入るのです。
この極めて排他的なラグスポ界に参入するUrban Jürgensen (ウルバン ヤーゲンセン)は1773年に創業されたデンマーク コペンハーゲンの時計メーカーです。20世紀に入ると休眠し、1978年に復活。2014年に所有と経営が刷新され現在に至ります。乱暴に言えば、ブレゲとブランパンを足したようなクラシックなピースを年間100本ほど細々と生産しているようなメーカーです。一本当たりの価格は5〜600万円のレンジです。
Jürgensen One Collection (ヤーゲンセン・ワン・コレクション)はこれまでのクラシックなラインとは趣向を異にするラグスポなモデルで構成されています。
ノーチラスを彷彿とさせるブレスレットは中心となるコマがオーバル形状の特徴的なデザイン。ノーチラスはラグが凹型になっているのですが、ワン・コレクションは通常の時計と同じようにラグtoラグでブレスレットを固定する方法なので、市販のレザーストラップやNATOストラップの装着も可能です。
ケース、ブレスレットともに医療用のオーステナイト系ステンレス鋼316LVM(1.4441)スチールが使用されています。クラスプは観音開きとなっており、完全にノーチラスを模倣した形状となっています。しかし、完成度は非常に高いです。
ところで、このワン・コレクションのケース厚は13.8mm。ラグスポの文法から外れているように思えますが、ウルバン ヤーゲンセンのようなオートオロロジェリー(超高級時計)が作れば、それはラグスポと言っても差し支えないのです。つまり、ブランドの格式が文法すら無視してしまうのがラグスポの難しいところ。例えば、ブランパンのフィフティファゾムズという典型的なダイバーズウォッチもブランパンの格式ゆえに、ラグスポの範疇に収まるのです。
搭載する自社製キャリバーP5は毎時21,600振動のロービートで、72時間のパワーリザーブを確保しています。ローターの外周が22K製であることからジャガールクルトのムーブメントを彷彿とさせる外観ですね。やや素っ気ないですが、まじめな時計づくりをしている印象。テンプは両持ちもブリッジに支えられ、フリースプラングによる調速により精度が維持されます。
腕に乗せた時の印象はカルティエのカリブル・ドゥ・カルティエに近いものを感じさせられます。画像のGMTモデルは、文字盤がブルーのみ展開されており、6時位置に24時間計のサブダイアルが配され、9−10時位置のプッシュボタンで1時間進み、8−9時のボタンで戻るというシンプルな操作系です。これなら腕に着けたままの操作で支障がなさそうです。
いかがでしょうか?
ウルバン ヤーゲンセンのワン・コレクションはAPやPPだけではなく、様々なメーカーのラグスポウォッチの影響が感じられる時計だと思います。価格から考えるとより薄くデザインされるべきだとも思いますが、これはこれで力強さがあって好印象です。
デイト付き3針モデルのRef.5421は2019年4月、GMTサブダイヤル付きのRef.5541は同5月のリリース予定です。
基本情報 | |
メーカー | Urban Jürgensen |
モデル/型番 | JÜRGENSEN ONE COLLECTION Ref.5241(3針)/Ref,5541(GMT) |
直径×厚さ | 41mm×13.8mm |
ケース素材 | ステンレススチール |
防水性能 | 120m |
価格/発売時期 | Ref.5241:CHF24,500(275万円)/2019年4月頃 Ref.5541:CHF33,500(375万円)/2019年5月頃 |
ムーブメント情報 | |
キャリバーNo. | Cal.P5(Ref.5541はGMTモジュール追加) |
巻上方式 | 自動巻 |
振動数 | 21,600 |
調速機構 | フリースプラング |
パワーリザーブ | 72時間 |
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